春日井市西尾町シデコブシ群生保全活動報告 平成23年4月   

シデコブシは伊勢湾周辺の丘陵地帯にある湿地にしか生えない東海地方固有の植物です。
そして昔の里山の代表的な植物でした。
日本の里山(世界的に里山が通じるようになった)はかって国土の約4割をしめていましたが経済成長に伴う開発か、里山の放置により荒れ果てそこに生息していた動植物は絶滅の危機に瀕しています。
シデコブシもギフチョウも絶滅危惧種に名を連ねています。
春日井市のシデコブシもかっては至る所にあり、坂下小学校の校歌にもなって現在も子供達に歌い継がれています。
しかし現在春日井少年自然の家の近くと西尾町の一部に群生が見られるのみとなりました。その少年自然の家付近は多くの人の目にも触れ早くから保護活動が行われ春には見事な花をさかせてくれます。

一方西尾町は2つのゴルフ場と高速道路に挟まれ人目につくことなく将に写真1の如く絶滅寸前状態になっていました。一部のこの状態を嘆く人もいますが、現在のしくみからこの保全を行政がおこなうことが出来なくて、春日井市の民間自然環境保全団体みどりのまちづくりグループが中部大学応用生物学科谷山鉄郎教授(現在は南教授に引き継がれる)と協働研究の形で愛知県県有林事務所の許可を戴き平成19年4月より現地調査を開始平成20年3月より本格的保全活動を開始しました。

初年度の1年間で自生地をくまなく調査し特に密生していて絶滅寸前の場所を決め、調査保全対象地域としました。そこは、湿地を中心にして南の面の雑木林と北面が雑木林の侵入した針葉樹の人口林に挟まれた地域です。

長さ140m幅40mの地域に254本の生存シデコブシ確認。
保全調査方法は全体をA,B,C,Dの4つゾーンに分けました。A,Dは現状そのままとし、Bゾーンは皆伐、Cゾーンはシデコブシのみ除き雑木を除伐、と決きめ254本に識別番号を付け樹勢の調査をすることとしました。

平成20年3月 Bゾーンの皆伐(雑木、シデコブシ85本)完了
平成20年4月 A、C、Dゾーンの皆伐したBゾーンを除いた170本中19本の開花確認
平成20年5月 Cゾーンの除伐完了
平成21年2月 Bゾーンの萌芽数75本確認
平成21年3月 Cゾーンの開花、蕾数25本(A,Dゾーン確認出来ず)

平成21年6月 Cゾーンは除伐により日照がよくなって先端近くに多くの芽が出てきましたが風で木が揺さぶられ、根が切れ枯れてしまう恐れが出た為1.5~2mの高さの支柱で支える。
平成21年8月 Bゾーンに実生調査、16本確認

平成22年4月 Cゾーンの倒れた幹から昨年芽吹いた小枝の先に無数の花がさきました。また、Bゾーンの皆伐した数本は萌芽した芽が70~80cmになり見事な花を咲かせました。Aゾーンは88本中18本枯れ、花の付いている個体数は13本

平成22年7月 Bゾーンの実生が35cmに成長。Cゾーンに実生が多く観察できます。(Cゾーンの実生の発芽が遅れたのは除伐が遅れ昨年発芽時期が過ぎた為か)

平成22年10月 B,Cゾーンの花後の調査で今年咲いた花には沢山の種が付いていました。また新芽には蕾が出来ていました。シデコブシの果実は鳥散布型である。Aゾーンは池につながっているのでB,Cゾーンに鳥が入りやすくする為に除伐を開始した。

まとめ
平成19年4月に調査入って実際に20年3月からの活動の2年半で数々の結果が出たのでまとめます。
1、 人為的であれ自然であれ、日照の条件が改善されればシデコブシの樹勢が大幅に改善される。
2、 ミズゴケが繁茂するような環境、適度の湿地環境が必要
3、 実生が直ちにでて更新が確認できた。(何時の種子か分かると良い)
4、 実生の生育が素晴らしく早い
5、 萌芽による新芽に2年で開花株になる。
6、 除伐より皆伐のほうが枯死する確率が少ない
高橋勇夫記